[QuarkXPress奮戦記 vol.21]

ポイントか級数か(2)

■1ポイントは何ミリか

 QuarkXPressの環境設定には、「ポイント/インチ」という項があり「72」となっている。1インチは72ポイントという意味だし、基本の計算単位はインチだということがうかがえる。

ポイント/インチ

 1インチは何ミリか。単位がミリになっている状態でメジャーパレットのどこでもよいから「1"」と入力すると「25.4mm」と表示され、これ以上の端数は出ない。つまり「1インチ=25.4mm」だ。
 では1ポイントは、何ミリか。

換算値

 1pt=1インチ÷72=25.4mm÷72=0.35277777777……mm

 私のおぼつかないコンピュータの知識で考えても、QuarkXPressは「1ポイント=1/72インチ」という関係式で規定しているのだと思う。パレットには計算結果を、指定された単位に換算して表示可能な範囲で(小数点以下第3位まで)示しているにすぎない。
 実際、先と同じようにメジャーパレットで「1pt」と入力してみると「0.353mm」と表示される。しかしこれを順次10倍していくと、1000倍で「352.778mm」となる。これは「352.7777mm」の小数点以下第4位が5捨6入されて表示されたものだ。ドキュメントの最大幅が609.6mm(24インチ)だからこれ以上は掛けられないが、結局QuarkXPressによれば、どこまでいっても「1pt=0.3527777……mm」なのだ。
 こうなると、QuarkXPressを前にして、操作する人間が1ポイントを0.352mmなり0.3528mmと規定してしまうことは、誤差を作るだけではないだろうか。文字サイズにポイントを使うなら、テキストボックスなどの作成には必ずパレット上で「pt」と単位付き計算を行わなければ正確にはならない。

 もっとも、誤差といってもそれは最大で百分の数ミリほどのわずかなものだ。見た目にはもちろん気づかない程度だし、印刷時のずれの可能性なども考えればそれほど大きな問題ではないかもしれない。
 しかし、いずれにせよミリで表示されたボックスのサイズはほとんどの場合、端数の出るうっとおしい数値となってしまう。これを扱いやすくするには、ドキュメントの縦横の単位にもポイントにそろえる必要があるが、このケースはほとんどないと思う。というのは、ドキュメントの単位設定をポイントにすると、メジャーパレットの単位はインチになるからだ。これはたぶん、極めて扱いにくいと思われる。
 また、1ミリは何インチかと考えると、これは「1ミリ=1/25.4インチ」という関係式となって、これまた「1mm=0.03937007874……インチ」と割り切れない。ついでに1ポイントをインチで表すと「1pt=0.013888888……インチ」と、これまた割り切れない。

 こういう関係ゆえに、ドキュメントもボックスも文字も全て単位を統一することに換算上のメリットがある。そしてそれには、用紙の規格との関係でミリが最もふさわしいのではないかと思うし、そうなると文字サイズは級数の方が扱いやすいと思うわけだ。
 なお、元が関係式で規定されている以上、ミリであっても先のテキストボックスを作る例で「70mm」といきなり入力すれば、それはQuarkXPressが計算したものと誤差が出ることはありうる。ボックスの中に入る文字サイズはすでにQuarkXPressが計算しているのに、その容れ物をQuarkXPressの外で計算したことが、時として0.0001mm以下の誤差が出た原因ではなかろうか。
 だから、実際に容れ物もQuarkXPressに計算させれば問題は解決したわけだ。つまり考え方は、QuarkXPressに「70mmのボックスを作りなさい」と命令するのではなく、「3.5mmの文字が20個入るボックスを作りなさい」と命令することなのだ。
 そこで次に、単位系を統一するメリットが具体的な作業場面でどう現れるかを見てみよう。


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