[QuarkXPress奮戦記 vol.21]

ポイントか級数か(3)

■版面とマージン

 級数を使う作業上のメリットは、まずマスターページの作成にあると思う。マスターページの作成には、外から考えるか中から考えるかの二通りの方法がある。私は「中から派」で、ようするに、先に版面のサイズを計算し、残ったサイズでマージンを割り振るという方法だ。
 たとえば組版の指示が、A5判縦組みの書籍、文字サイズ14Q、行数24行、行送り20H(Q)だったとしよう(行送りの「H」は写植の「歯送り」で0.25mm刻み。級数と同じで20Hは5mmになる)。
 とりわけ縦組みでは、横組みのようにベースライングリッドが使えないので、行揃えのためには指定行数がピッタリ収まるテキストボックスを作るのが都合がよい(「vol.1 縦書き多段組み編集の行揃え」参照)。こうすれば多段組でなくても、ページの裏表で行がキッチリ揃う。縦組みでは版面=テキストボックスのサイズと考えてもいいだろう。
 指定行数がピッタリ収まるサイズは下の図の通りだ。

版面とマージン

 この例の場合だと、版面(テキストボックス)の幅は「5×23+3.5=118.5mm」となる。A5判縦型の横サイズは148mmだから、マージンサイズは左右合わせて29.5mmとなり、たとえば小口(外側)マージンを14mm、ノド(内側)は15.5mmとするわけだ。
 これをマスターガイドの左右マージンのフィールドに入力する。ただし、ここは直接テキストボックスを作るためのものではないので、計算で作るという方法が使えない。だからどちからのサイズから「0.0001mm」をマイナスする。すると、出来上がったボックスは、ピッタリ収まりかつ「118.5mm」ときれいな数値になっている(このあたりについてはvol.17参照)。
 もちろん組版の指示はマージンを指定されることがほとんどで、時としてそれと合わないことがあるが、私は迷わず、テキストボックスサイズを生かしてマージンを調整する。指定とのわずかな誤差はそれほど目立たないし、版面を中心に考える方がはるかに扱いやすいのだ。実際、これまでこうしたことによって文句を言われたことはない。

 さてこれをポイントでやるとどうなるか。たとえば文字サイズ10pt、24行、行送り14ptとすると、作るべきテキストボックスの幅は「14pt×23+10pt」となり、QuarkXPressはこの結果を「117.122mm」と表示する。マージンに設定できるのは30.878mm、小口を14mmとすると、ノドは16.878mmとしなければならない。単位が違うので、ここでも微調整が必要になるだろう。
 正確な設定のためにXTensionのお世話になったとしても、ドキュメントでの作業は端数の出た数値を相手にしなければならない。計算単位に必ず「pt」を入れてやることでかなり楽になるとは思うが、それでもうっとおしいことが多いだろう。
 実は私も、つい最近までは「0.0001mm」の微調整ということを知らず、「0.001mm」で微調整をしていた。結果的にボックス位置に「.999mm」、サイズに「.001mm」という数値を相手にしていた。それでも作業はミリ単位で行えたのでさほど不便はなかったが、最近はいい微調整を覚えたのできれいな数値を相手にし、とても扱いやすくなったことを実感する。

 なお、マージンに合わせてテキストボックスを作り、行送り値を調整したり、ボックス内の行配置を「ジャスティファイ」にするという方法もある。これが私流に言う「外から派」だ。
 しかしこれでは、いずれも中途半端な数値の行送りになるため、切り壊しがあったりすればまず確実に行ずれが起きるなど、対応に困る場面に遭遇することにならざるをえないと思うのだ。

 こうして、作業上のベーシックな部分でわかりやすい数値を設定できる級数は、結局、ドキュメントでの作業をかなり楽にしてくれる。おかげで私は、ボックス作成に関連するXTensionをほとんど必要としていない。
 そしてこれらのことは、基本的に文字数設定の場合でも同じだ。横組みではベースライングリッドを使用することで行揃えにさほど気を使う必要はないが、文字数設定との関係ではやはり左右マージンが問題になるから、やっぱり基本的に同じだと思う。
 もっとも文字数設定に関しては、日本語でベタ組をする場合に限られる。欧文ではまず問題にならないし、日本語でも詰め組みをするならば、ピッタリサイズのテキストボックスというのは問題外だ。


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