[ひとりごと(1998.7.19)]

久しぶりの取材で

 ひところ室内仕事ばかりだったが、このところいくつかの取材依頼がダンゴ状態でやってきた。暑くなってきたから、うれしいようなしんどいような、複雑な心境ではある。

 先日は、比叡山のふもとにある野外センターの取材に出かけた。
 地図で見ると、京都の八瀬から出ているケーブル乗り場の脇を入っていけばよい。ケーブルの駅に到着し、車の中からその道を確認すると細い道のようだ。そこで駅の駐車場に車を置こうとすると、「係員がいないときは、駅員に駐車料金をお払いください」との看板。車を置いて駅に入っていくと、駅員はヒマそうにしていた。京都の観光地では夏はシーズンオフだからこんなものか、と思いながら声をかけた。
「あのう、駐車料金を……」
「あっ、はいはい、600円です。ちょっと待ってください」
 駅員はにわかにえびす顔になり、首からかばんをさげてやってきた。
「野外センターは、あそこの道を行けばいいんですよね」
 お金を払いながら何気なく聞いた。
「そうです」

 時間が少し早かったので、自販機で缶コーヒーを買って飲み、いざ出発。しかし歩き始めてすぐ、僕はこれが失敗だったと気づいた。なんと、向こうから車がやってくるではないか。ギリギリの幅だが、通れないことはないのだ。
「なんだよ、車が通れるやんか。ちょっと教えてくれたらいいのに……」
 と思っても、駐車料金を払ってしまったし、もう後の祭りだ。仕方がないからそのまま歩くことにした。
 ところがこの道、けっこう坂道で、しかも思ったより長い。まあ、木が茂っているから割とすずしいし、下から川の音が聞こえてくるので、気分はなかなかよい。運動不足の折りだし、ま、いいか。

 さて、取材でいろいろ話を聞き、主な目的である遊具の写真を撮ろうと案内していただくことになった。
「ちょっと上の方にあるんですけど、こちらです」
 センターのおばさんが先に立って案内してくれたのだが、それは、山の中腹に点在していたのだ。子どもの頃はいなかの山を走り回って遊んだものだが、山歩きなどほとんどそれ以来で実に久しぶりだったから、ちょっとふうふう言いながらついて行く。
 遊具の写真を撮り終えると、このセンターを象徴するような写真がほしくなった。で、下りようとすると、
「それなら、もっと上にいいのがあるんですよ」
 おいおい……。仕方がないから、これまたふうふうとついて行くと、それはそれで、ちょっと北海道的な造りの小屋やサイロがあり、京都とは思えないロケーションだった。ま、いいか。

 日頃の運動不足を思い知らされた取材が、ようやく終わった。
「こんなところで仕事をなさっていると、いい運動になりますね」
「ええ、まあそうですねえ」
「山の世話とか、大変でしょう?」
「そうです。でもなかなかできなくて……」
 つい余計なことを言いそうになった。
「その割に、痩せていらっしゃいませんね」
 僕は、あわててその言葉を飲み込んだ。

(記/1998.7.19)


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