[えでぃっとはうすのときど記]

『京都ビンボー遊び術』と山崎ワールド

photo さきごろ亡くなった山崎重子さんの遺作『京都ビンボー遊び術』(かもがわ出版)がこのほど出版されたので、買って読んだ。地元の雑誌に1995年から2003年まで68回連載されたものを再編集したもので、葬儀の際にいただいた「あとがき」が収録されている。

 「うちの雑誌には、無名のライターの、店に対する思い入れや感想などはいりません。店の情報がきちん入っていれば結構。あなたが有名な旅行作家なら別ですが…」

 以前、彼女がある旅行社のガイドブックに書いた記事に、編集部から言われた言葉だという。よほど忘れられないひとことだったようで、生前の本人からも直接聞いたし、この本の本文(つまり雑誌連載時)でも、もちろんあとがきにも登場している。「だから、好きなように書かせてもらえた連載は面白かった」というのも、彼女からよく聞いた話だった。
 実は当時、僕は彼女の連載の熱心な読者ではなかった。その雑誌をあまり読んでいなかったからだ。そんなことも気になって、まこと遅まきながらこの本を読んだ次第だ。

 少し読み進んだところで、申し訳ないけれども、僕がもし編集部だったらかの旅行社と同じことを言うのではないかと思ってしまった。かなり饒舌な印象を受けたのだ。「うん、それはいいから、早よ店のこと言うて」という感じ。
 今回の本は連載順ではなくてテーマ別に編集してあるが、初めの方は比較的連載開始当時のものが多かったようだ。

 それでも、とにかく読まねばと思って読んでいたら、不思議と次第に違和感が薄れていく。その意味では「連載」って大きいと思える。単なるお店情報から「山崎さんの連載」を読む感覚に変わってくるわけだ。
 そして、本人を知っているということもあるが、彼女の暮らしぶりが垣間見えて、次第に山崎ワールドに入っているのだ。そんなわけで、後半はわりと一気に読んでしまった。
 この本を片手に出かけてみたいスポットもいくつか。山崎さん、面白い情報をありがとう。

(記:2005/11/28)



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