京のお酒エッセー

「米鶴」盗み吟醸あらばしり生（山形県・米鶴）

　米鶴でもおいそしうな活性酒を見つけたので、前回の鶴ラベルとともに買い求めていた。ただ、純米かどうかがサイトではわからなかった。まあ来ればわかるか、と思って買ったのだったが、届いたお酒の原材料を確かめると「醸造アルコール」があったので、実はちょっとがっかりしていた。
　そのがっかり感はしかし、実際に飲んでみると、心地よい炭酸味が吹き飛ばしてくれた。

　ビンの首には「危険　吹きこぼれる恐れがありますので開栓の際は注意して下さい」と書いた赤い札がつけてある。
　しかしもう、僕もけっこう慣れてきた。よく冷やしていたおかげで、「開栓の仕方」にあった千枚通し等でキャップを突き刺さなくても、静かに開いた。
　そのため、コップの写真もビンの上澄みを注いだかっこうになった。沈殿したオリを混ぜると、全体的にうすにごりになる。

　やっぱり、キューッとくる炭酸味は口当たりもドライだし、何よりキレがいい、といつも思う。酒蔵取材で初めて柄杓で飲んだ「たれくち」を思い出す味だ。
　それ故なのか、醸造アルコール的なものを感じない。炭酸味が吹っ飛ばしてくれたのだろうか。なので、15度のアルコール度数があるのに、ついついクイクイと飲んでしまった。

　そういえば、ある蔵で「たれくち」を試飲したとき、「アル添してるけど、うまいでしょ」と言われたこともある。僕は「アル添してるけど」が耳に残ったが、そのあとに「大吟より」と続いたような気もする。
　もしかしたら、醸造アルコールは炭酸味を引き立てるのだろうか。

　もう一つ、このネーミングからは、何が「盗み」なのかと思ってしまう。蔵元サイトはもちろんネット検索しても、ようするに「蔵元の門外不出の吟醸酒を盗み飲んだ」という、蔵に伝わる「伝説」が由来らしい。なあ〜んだ、とホッとした。

　クイクイ飲んだせいか、実は翌日、ちょっと残った。単純に短時間で飲んだせいなのか、それとも体が醸造アルコールに反応しているのか、いささか興味深い。


【データ】
「米鶴」盗み吟醸あらばしり生
醸造元：米鶴酒造株式会社（山形県高畠町）
製造年月：2011年8月
原材料名：米・米麹・醸造アルコール
精米歩合：55％
アルコール分：15度
日本酒度：+1〜4
杜氏：須貝　智