京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
ネットで青森のお酒を物色していて、この蔵「桃川」が目に止まった。銘柄に見覚えがあったような気もするが、記憶は定かでない。ただ、今年の仕事で「桃川燕雄(ももかわえんゆう)」という実在した講談師の話を語る故マルセ太郎の立体講談に触れたことで、「桃川」という名前が脳裏に刻まれていたのだと思う。
全国新酒鑑評会で4年連続金賞を受賞している蔵だという。いくつかある銘柄のなかから大吟醸純米「佞武多(ねぶた)」を買ってみた。
米鶴でもおいそしうな活性酒を見つけたので、前回の鶴ラベルとともに買い求めていた。ただ、純米かどうかがサイトではわからなかった。まあ来ればわかるか、と思って買ったのだったが、届いたお酒の原材料を確かめると「醸造アルコール」があったので、実はちょっとがっかりしていた。
そのがっかり感はしかし、実際に飲んでみると、心地よい炭酸味が吹き飛ばしてくれた。
純粋日本酒協会の蔵元紹介に掲載されていた東北の酒蔵は、この米鶴だけだった。その少なさかがちょっと意外だったが、さっそくアクセスしてみた。いわゆる「純米蔵」というわけではないようだが、食指を動かされそうなお酒が並んでいた。そのなかから、JALの機内酒にもなったという純米大吟醸「鶴ラベル」を求めてみた。
南部美人という銘柄名も、もちろん見覚え、耳覚えがある。ただ、これまでに飲んだかどうかとなると、記憶が定かでない。
というか、実はあちこちのお酒はいろいろ飲んだつもりだが、よほど個性的でない限り、それらの記憶はほとんど残っていない。せっかく飲んだのに残念至極だ。
その点、このブログは思い出すのに役に立つ。なので、いい機会だからと取り寄せてみた。
300ml瓶だし、活性酒だし、しかもアルコール度5%とビール並みだし……、というわけであらかじめ予想したが、「すず音(ね)」は10分余りでなくなってしまった。活性酒と見ると目がないものだから、先日の「一ノ蔵」でいっしょに買っていたのだった。
有名な蔵だからだろう、その名前に見覚えがあった。きっとどこかの店で「一ノ蔵を」と頼んだことがあったのだと思う。間違いなく、一度は飲んでいるはずだ。
「蔵の華」というのは、宮城県で独自に育成された酒造好適米なのだという。米づくりから地元ならではのお酒をめざす姿勢には好感がもてる。蔵には農業部門「一ノ蔵農社」もあるらしい。その米を100%使った純米吟醸酒があったので、買い求めてみた。
もちろん静かに入れたのだが、まるでドボドボと注いだビールのように、泡がコップいっぱいに立ちあがった。泡が静まるのを待って注ぎ足す。ビールに比べるとやや粗い泡だが、感覚はまさにビールを注ぐのと同じだった。そう思うとこのビンも、ラッパ飲みが似合いそうなビールビンに見えてくる。
残念ながらその荒々しい様子は写真に撮れなかった。撮っている間にもどんどん静まってきたから、ピークに比べるとずいぶんおとなしい。
「全米」というのは、初めて目にする言葉だった。お酒を入れたパッケージを開くと内側に解説が印刷されていて、それによればマスコミでも大きく取り上げられたそうだが、僕は知らなかった。瓶のラベルには「純米酒ではありません」と書いてある。原材料には「醸造アルコール」も明記してある。「全米」っていったいどういうことなのか。
冷蔵庫でしっかり冷やせていたからだろうか、「お部屋中まっ白になっても当店は一切関知致しません」との注意書きのある「保存と開栓のご注意」に書かれていたほどには、この「ピチピチ」は暴れなかった。むしろビンを振って、沈殿したオリをまぜたくらいだった。
同様のにごり酒をつくっている蔵は京都にも「月の桂」があって、先日も「龍馬に恋して」を飲んだところだが、その時はけっこう暴れた。だから、もちろん慎重に、ゆっくり振ったことは言うまでもない。
地元のお酒を地元で飲むのが一番旨いからとここ数年、京都のお酒ばかりを飲んできた。しかし東日本大震災に直面したいま、そのお酒を飲むことが復興に多少なりとも役立つのであれば、喜んで東北のお酒を飲もうと思う。
ネットで酒蔵を検索してみた。「東北の日本酒を飲む会」なるサイトがあった。さすがに東京までは足を運べないが、その出展蔵名簿を見ていてまず気になったのが、この「蔵粋(くらしっく)」だった。