京のお酒エッセー

純米吟醸「一ノ蔵」蔵の華（宮城県・一ノ蔵）

　有名な蔵だからだろう、その名前に見覚えがあった。きっとどこかの店で「一ノ蔵を」と頼んだことがあったのだと思う。間違いなく、一度は飲んでいるはずだ。
　「蔵の華」というのは、宮城県で独自に育成された酒造好適米なのだという。米づくりから地元ならではのお酒をめざす姿勢には好感がもてる。蔵には農業部門「一ノ蔵農社」もあるらしい。その米を100％使った純米吟醸酒があったので、買い求めてみた。

　お酒は注文して2日で届いた。蔵元の直接販売はないようだが、蔵元サイトからショップへのリンクがつながっていた。

　開栓すると吟醸香がこぼれ出た。コップに注ぐと、ほぼ無色透明に見える。口に含む。第一印象は「やわらかい」。
　伏見のお酒も全般的に口当たりはやわらかい。それにくらべるとやや硬いように思えるが、一般的な印象としては「やわらかい」のではないかと思う。そこの水に興味がわいた。

　もう一つの印象はあっさり感。日本酒度的にはやや甘い印象を受けるが、それほどでもない。ナチュラルといったところか。
　コップ3杯目くらいから、無性にアテがほしくなってきた。僕の勝手な基準だと、アテがほしくなるのは辛口なのだが、データ的にも実感的にも、そんなに辛口でもない。でも、口が何か食べ物を求め始めるのだ。

　冷蔵庫をあさって豆腐を見つけた。薄口醤油をかけただけのシンプルな冷や奴にする。口に含めば大豆の香りがするのだが、これがなかなか合う。先日の「奥の松」もそうだったが、東北のお酒は豆腐と相性がいいのだろうか、とさえ思ってしまう。
　しかも、冷や奴はおかわりまでした。その豆腐もなくなると、次にはキュウリスティックを出してきた。僕はマヨラーなのでマヨネーズでアテにする。これがまた違和感がない。そしてずいぶん久しぶりに、四合ビンが空いてしまった。

　誰かといっしょならまだしも、僕の場合一人だとさほどの量は飲めない。だから、こんなことはこれまでそんなになかったように思う。
　お酒だけを楽しむのも僕は好きなのだが、そんな僕でも自然に何か食べたくなるこのお酒、なかなかタダモノではないような気がした。


【データ】
純米吟醸「一ノ蔵」蔵の華
醸造元：株式会社一ノ蔵（宮城県大崎市）
製造年月：2011年5月
原材料名：米・米麹（宮城県産「蔵の華」100％）
精米歩合：50%
アルコール分：15度以上16度未満
日本酒度：±0〜2