京のお酒エッセー

京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男

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全米大吟醸「奥の松」(福島県・奥の松酒造)

2011/05/16 (月) | 東北の酒

okunomatsu_1s.jpg 「全米」というのは、初めて目にする言葉だった。お酒を入れたパッケージを開くと内側に解説が印刷されていて、それによればマスコミでも大きく取り上げられたそうだが、僕は知らなかった。瓶のラベルには「純米酒ではありません」と書いてある。原材料には「醸造アルコール」も明記してある。「全米」っていったいどういうことなのか。

okunomatsu_1.jpgokunomatsu_2.jpg つまり、醸造アルコールを米でつくっているのだそうだ。しかも自社の純米吟醸酒を蒸留しているという。米焼酎だが、度数的には米スピリッツとも言えるらしい。醸造アルコールを添加しているという点で純米酒とは区別するが、材料は全て米だから「全米」ということのようだ。

 おもしろい、と思った。純米酒党の僕には、ちょっとしたカルチャーショックでもあった。
 醸造アルコールが焼酎であることは知っていた。焼酎の材料はさまざまで、僕が好きなのは麦と米だ。実はこのごろ、もっぱら麦焼酎を飲んでいたりする。
 しかし、醸造アルコールそのものが好きでなかったから、それを米でつくるという発想にはまったく至らなかった。だからその着眼点に、頭を打ちのめされた気がした。

 吟醸酒の醸造アルコールは、味を整えるためと理解している。純米だと濃くなるところを淡麗にするなどの効果が期待されているように思う。だから、スッキリ感のある淡麗なお酒ではないか、と飲む前に予想した。

 開栓した。吟醸香がこぼれ出た。いい香り。いつもコップに注ぐ。ほんの少し黄みがかっているようだが、ほとんど無色透明。口に含む。トロリとした感覚。味がある。好印象。最初の印象は「旨口」といったところ。

 そのままアテなしでいけるかとも思ったが、1合半ほど飲んだところでアテがほしくなってきた。日本酒度が4.5だから実は辛口のお酒なのだ。ただ、酔うにつれ飲み口に「味」が残るのが少し気になってきた。思ったほど淡麗ではなかったようだ。
 冷蔵庫を物色すると「とろけるチーズ」があったので、合わせてみた。いまいち……。さらに物色すると豆腐があった。冷や奴にして薄口醤油をかけて合わせてみた。これはグッド。互いに引き立てるという感覚とはちょっと違って、アテがあればもっと飲めるかも、といった感じだ。

 振り返ると、なんとなくいつもと違う印象が残った。香り的に気になったりすることは一切なかったが、材料がすべて米であったとしても、醸造酒に蒸留酒を混ぜるというところに、少し違和感を感じたのかもしれない。


【データ】
全米大吟醸「奥の松」
醸造元:奥の松酒造株式会社(福島県二本松市)
製造年月:2011年5月
原材料名:米・米麹・醸造アルコール
精米歩合:50%
アルコール分:15度
日本酒度:4.5
酸度:1.2

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