京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
この「京の酒エッセー」は、まず伏見の蔵元をひととおりめぐり、それから銘柄ごとにいろいろ試してみようと思っていた。しかし油長さんの紹介を見て、蔵元重複がわかっているのに、どうにも飲んでみたくて辛抱できなくなってしまったお酒があった。
月桂冠といえば大手だ。伏見の大手筋近くにあって「大手蔵」なんてのもある。いや、そういう意味ではなくて、日本有数の酒造メーカーのひとつだ。
大手は好かん。だから僕はこれまで、月桂冠をわざわざ買って飲むことはほとんどなかった。買ったといえば、大倉記念館で限定販売している吟醸酒「ザ・レトロ」くらいだ。
とにかく、純米酒で日本酒度が「+6〜7」というのは珍しいらしい。実際、このシリーズで飲んでいるのもだいたい「+3」とか「+4」あたりだから、確かに高い。ついでに酸度も、これまで飲んだなかでは一番高い部類だ。つまり「極辛」は数値的にも裏付けられている。だから、どんなに辛いのだろうかとワクワクしながら栓を開けた。
ずいぶん長い間僕は、京都の伏見でなんで「港」やねん、という印象をもっていたように思う。日本海側で生まれ育ったせいか「港」というのは海にあるものだと思っていたから、海のない京都で「港」というのが不思議だったのだ。
どちらかと言うと僕は、お酒、とりわけ家で日本酒を飲むときには、そのお酒だけを楽しむタイプだ。あまりアテは食べない。
ところが最近、アテがほしくなる酒とそうでない酒があることに気がついた。
取材で伏見に行くことがあったので、ついでに大手筋商店街に油長さんを訪ねた。同店サイトで「『伏見の酒』は甘くない」とのキャッチがついた「慶長 伏見の酒」が気になっていて、買い求めたかったからだ。
山本本家は「神聖」の銘柄で知られるが、僕などは同蔵が直営する居酒屋「鳥せい」と聞くと「ああ」と思い当たる口だ。また「源べエさんの鬼ころし」もこの蔵だと知ると、「へえ、そうだったんだ」と思ってしまう。残念ながらいずれも、飲んだり訪ねたことがなかった。
ずいぶん前、飲み屋で飲んでいた酒が美味しかったので、小瓶を数本わけてもらって訪ねる家への土産にした記憶がある。それが「桃の滴」だった。ここ数日、純米吟醸酒が飲みたいと思っていたところ、その「しぼりたて」が目にとまったので買ってみた。
「玉の光」といえば、全国的に有名な銘柄のひとつだろう。「全国の地酒あります」と銘打ったお店に入れば、京都のお酒として「玉の光」が含まれていることが少なくない。そうかと思えば、コンビニでも見かけることがある。なので、ちょっとメジャーすぎるなと思ってこれまであまり飲まなかったが、「京都地区限定」という「こころの京(みやこ)」が目にとまったので試してみることにした。